グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



Home >  在宅診療の教科書 >  終末期だからと、安静だけにこだわらなくていい

終末期だからと、安静だけにこだわらなくていい


医師から、最終段階が近づいている、余命数ヶ月といった話があると、本人もご家族も「体に障るようなことは、何もしてはいけない」という心理になりがちです。本人はただひたすらじっと横になるだけ、家族も息をひそめるようにして命が終わるときを待つ、という状態になってしまいます。
私は、こうした発想は病院的な考え方だと思っています。実際に病院ならば、終末期の患者さんが食べたいものがあっても、やりたいことがあっても、「それは控えておこう」と指示されることが少なくないでしょう。病院の医師たちは、患者さんの命を1分でも長らえることが仕事ですから、「おかしなことをして何かあったらどうする」という発想になります。

しかし、在宅医療はそうではありません。

命の長さも大切ですが、最終段階を含めてどんな状態でも、その人らしい暮らしができること__それが在宅医療の目的です。

その人らしさを第一に考えたときに必要だと思うことは、多少のリスクがあったとしても、医療・悔悟の専門職が可能な範囲を探りながら支援をしていきます。
時には私たちチームのほうから、温泉旅行でもなんでも、したいことがあれば相談してほしいと提案することがあります。

どんな段階になっても「その人らしい暮らし」を

当クリニックの例では、外出時にどうしても必要なときは医師や看護師が同行するケースもありますが、家族だけで外出をされることもよくあります。家族水入らずで過ごせた時間について、「とてもよかった」と言ってくださるご家族がたくさんおられます。
音楽が好きなあるがん患者さんは、終末期に親しい友人を自宅に招いて演奏会を行い、満足したという表情で翌週に亡くなりました。たとえ最終段階でも、むしろ最終段階であるからこそ、本人は本当に自分のしたいこと、家族は先に逝く人にしてあげたいことを、一緒に考えていきましょう。

引用元

『事例でわかる!家族のための「在宅医療」読本』 著者:内田貞輔(医療法人社団貞栄会 理事長)
発売日:2021年6月1日
出版社:幻冬舎