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Home >  在宅診療の教科書 >  出血や呼吸困難などがあると、家族は不安に

出血や呼吸困難などがあると、家族は不安に


それまで平穏に在宅療養をしてきた方でも、いわゆる終末期になると、思いがけない症状が起こることがあります。
肺がんの方では出血や血痰が続くことがあります。肺がんの末期では3割ぐらいの方にみられる“よくある症状”の1つですが、初めてがんの終末期の方を看護するご家族は、やはり慌ててしまいます。
そのほかにも、呼吸困難、全身倦怠感、意識の混濁といった症状が現れることもあります(下図参照)。

在宅看取りの方針が決まったときには、これから起こり得る症状などについても説明はするのですが、実際に出血や、苦しんでいる患者さんを目の当たりにすると、ご家族はどうしても「怖い」と感じ、「家でこのまま看ていけるのか」と不安や緊張が高まります。

私たちは、終末期にこうした連絡を受けたときは必ずお宅を訪問するようにしています。医師や看護師がお宅まで行き、顔を合わせてお話しすることがご家族にとって何より安心につながるからですが、訪問する理由はそれだけではありません。
ご家族が患者さんに対して自分たちでしてあげられることを、できる限り具体的に伝えるようにしています。

家族が安心して見守れるように「できること」を指示

例えば出血が続くケースでは、病院であれば医師が止血剤を処方して終わりだと思います。また、在宅でも家族から電話があるたびに帆門看護師が急行し処置をする、という対応も考えられるかもしれません。
しかし、その方法では医療従事者でなければ問題を解決できないことになり、医師や看護師がいない時間は、ご家族は不安や緊張がずと続くことになります。それでは臨終までの期間を安心して見守ることはとてもできません。

終末期に特有の症状が起き、患者さんが苦しそうにしているとき、一般のご家族が「自分たちにもしてあげられることがある」という感覚をもてることは、実はとても重要なことです。
医師が行うような医療行為はできなくても、口を拭ってさっぱりさせてあげる、姿勢を変えてあげるといったケアは、御家族にも十分に対応ができます。
何もかも医療従事者まかせというのではなく、ほんの些細なことでも自分にもできることがあると知ると、ご家族は自信をもって看取りに向き合えるようになります。そして苦しいときに寄り添ったという経験が、家族の絆をより深いものにします。

引用元

『事例でわかる!家族のための「在宅医療」読本』 著者:内田貞輔(医療法人社団貞栄会 理事長)
発売日:2021年6月1日
出版社:幻冬舎