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在宅医療の「連携力」とは?_現場から学ぶ日常の積み重ね


在宅医療では、医師・看護師・内勤スタッフ・ケアマネジャー・ご家族など、多職種が連携して一人の患者さんを支えるチームケアが不可欠です。しかし、ただ"連携”という言葉を掲げるだけでは、日々の医療現場は回りません。

今回は、ある新人スタッフの疑問から始まった対話の中で、貞栄会ならではの「連携のリアル」について見えてきたことを、コラムとしてお届けします。

「連携」って実はむずかしい?新人スタッフの葛藤

「優先順位がわからない」「内勤にいつ・何を報告すればいいのか迷う」。
訪問診療の現場に出始めたばかりのスタッフが抱える悩みは、病院勤務時代にはなかったものでした。

特に在宅医療では、家族や施設、内勤スタッフなど"複数の相手”に連絡や報告を行う場面が多く、診察後のタスクも山積み。
自分のキャパシティと相談しながら、どこに・どの順番で報告すればいいのか判断するのは簡単ではありません。

一つの診療イベント=「報告」まで含めて完了

ある先輩スタッフはこう語ります。

「診察で点滴を指示したなら、その内容を家族に伝えるのも内勤に連絡するのも、全部含めて"1つのイベント”と考えています。」

この感覚は、在宅診療を支えるうえでとても重要です。たとえば抗生剤の開始や急変時の対応などは、翌日以降の診療にも影響します。
家族や内勤との情報共有が遅れると、必要なフォローやアクションが後手に回ってしまう可能性があるのです。

「電話じゃなくてチャットでいい」が変える業務効率

もう一つのキーワードが業務の効率化です。

「急ぎじゃなければチャットで十分。内勤が決まった時間に確認できるようにすれば、お互いにストレスが減る」

リアルタイムでのやりとりが必要なことばかりではありません。むしろ、“報告しなきゃ”というプレッシャーに追われるより、パターン化とタイミングの最適化が求められるのが今の在宅診療なのです。

医師の判断もスピードと明確さが命

実は、情報共有の遅れの根本には「治療方針がその場で決まっていない」という問題もあります。

「先生がカルテの入力を後回しにしていると、看護師も指示が出せないし、報告もできない」

そのため貞栄会では、医師も“即断・即実行”を重視。現場のナースが「先生、これって明日フォローですよね?」と声をかけられる関係性こそが、スムーズな連携につながります。

終末期や脱水、褥瘡…共通パターンを「見える化」へ

さらに、院内では現在、さまざまな症状や診察パターンを可視化するマニュアルの整備も進行中。新人スタッフが入った際に、現場ですぐ動けるための「標準パターン」を言語化することが目的です。

今後は、模擬訓練や実地研修も組み合わせ、実践的に学べる体制を整備していく予定です。

最後に:「連携力」は日々の積み重ねから

在宅医療の“連携”とは、単なる報告連絡相談ではありません。

  • 家族への声かけ
  • 内勤とのスムーズな情報共有
  • チームとしての診療方針の一致
  • 現場からの疑問や気づきを共有し合える関係性

それぞれが「自分ごと」として動こうことで、はじめて真のチーム連携が生まれるのです。

この積み重ねこそが、貞栄会の在宅医療を支える“目に見えない力”なのかもしれません。