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Home >  在宅診療の教科書 >  関節リウマチと在宅医療の新しいかたち

関節リウマチと在宅医療の新しいかたち


関節リウマチの患者さんにとって、日常生活の中での小さな困りごとや、ふとした体調の変化は、想像以上に大きな負担になります。
当法人理事長である内田自身、リウマチ専門医として外来で多くの患者さんを診てきた中で、専門的な治療だけでは支えきれない課題の多さを痛感してきました。

今回は、関節リウマチという慢性疾患に在宅医療がどのように関われるのか、そして患者さんの生活にどのような可能性を広げてくれるのかについてご紹介します。

専門医に頼り続けるだけで、本当に大丈夫?

関節リウマチは専門性の高い病気であるため、多くの患者さんが大学病院などのリウマチ専門医による継続的な治療を希望されます。

確かに専門医の存在は心強いのですが、通院のたびに長時間の待ち時間があり、診察時間は短く、日常の困りごとまでは相談できないという声もよく耳にします。

また、関節リウマチは65歳未満でも介護保険が利用できる「特定疾病」に該当していますが、そのことがあまり知られておらず、実際に活用している人は少数派です。
外来のリウマチ専門医が介護保険の話にまで触れる機会がないという事例もあり、生活上の支援につながる制度が活かされていないのが現状です。

「2人主治医制」で、日常も専門的な治療もカバーできる

そこで注目されているのが、病院のリウマチ専門医と在宅医が役割分担する「2人主治医制」です。
病院の主治医が関節リウマチの専門的な治療を担当し、在宅医が日常の健康管理や発熱・感染症など急な変化に対応するという仕組みです。

リウマチの患者さんは免疫を調整する特殊な薬を使っているため、発熱などの際に一般の救急外来では対応を断られることがあります。専門医が不在の時間帯も多く、対応が難しいケースもあります。
そんなときでも、在宅医がいれば初期対応がスムーズにでき、通院の負担を大幅に軽減できます。

自己注射が難しくても、治療を諦めなくていい

近年は、生物学的製剤という注射による治療薬が大きな効果を発揮しています。
しかし、認知症や身体的な制約などにより自己注射が難しい方は、せっかくの治療法を諦めてしまっていることがあります。

在宅医療を導入すれば、医師や看護師が定期的に自宅に訪問して注射を行うことが可能です。
実際にこの方法で、関節の動きが改善し、指輪をつけられるようになった、料理ができるようになった、買い物に行けるようになったといった回復の例も多く見られます。

定期的な見守りで、感染症の重症化を防ぐ

生物学的製剤を使用していると感染症のリスクが高まります。
通院が3カ月に1回というペースでは、症状の変化に気づくのが遅れ、気づいたときには入院が必要になることも少なくありません。

訪問診療(月2回)と訪問看護(週1回)を組み合わせれば、3カ月で18回も医療者が患者さんと接することになります。
その中で体調の小さな変化にも気づきやすくなり、早めの対応が可能になります。抗生剤の早期投与や入院を避ける選択がとれるケースも増えています。

医師と患者の「治療のゴール」がすれ違わないために

医師は治療の成果を血液検査やレントゲン画像で判断しがちですが、患者さんの本当の願いは「痛みが減って〇〇ができるようになること」です。たとえば、「ピアノが弾きたい」「庭仕事をしたい」といった具体的な目標に向けたサポートがあることで、治療の納得感も大きく変わってきます。

在宅医療は、そうした生活の中の目標を一緒に見つけ出し、医療と生活をつなぐことができる存在です。
「治療のための医療」から「生活のための医療」へ。その第一歩として、在宅医療という選択肢を知っていただけたらと思います。