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地域と共に歩んだ10年、これからも「人生の伴奏者」として


2025年4月1日、横浜在宅診療クリニックの原点である静岡ホームクリニックは開院10周年を迎えました。この節目に、当法人理事長・内田に、これまでの歩みとこれからの想いを伺いました。

開業当初の苦労と忘れられない夜

「24時間365日、絶対に対応する」__そう決意して始まった静岡ホームクリニック。
最初の3年間は、夜間の電話対応もすべて内田一人で担い、必要があれば深夜でも自ら運転して患者さんのもとへ向かいました。

ある冬の夜、ひとり暮らしのご高齢の女性から「胸が苦しい」との電話を受け、すぐに駆け付けたところ、実際は不安からの過呼吸でした。「来てくれて本当に良かった」と涙ながらに語ったその方の姿は、今も内田自身の胸に刻まれています。この経験が、在宅医療の本質__「医療行為」以上に「寄り添い」が大切であることを深く教えてくれました。

10年の歩みと変化

静岡から始まったこの取り組みは、今では東京・千葉・名古屋・横浜へと広がりを見せています。ただの拡大ではなく、「その土地で暮らす人々に寄り添う医療」を丁寧に築いてきた結果です。

特に印象深いのは、在宅医療の認識が「特別」から「当たり前」へと変わってきたこと。「紹介したい」「お願いしたい」と言われる機会も増え、医療・介護の垣根を超えて地域が一つのチームのように連携していると実感しています。

「在宅入院」という考え方の確立

大きな転機となったのは、「在宅入院」の考え方を確立したこと。在宅でも入院と同等の医療が提供できるよう、病状が不安定なときは連日の訪問も辞さない体制を整えました。

90代の肺がんの女性に、緩和ケアと酸素療法を自宅で行ったケースでは、娘さんとともに過ごした最期の1週間が「宝物のような時間だった」と感謝の手紙をいただきました。この出来事は、医師としての姿勢をさらに強くした原点となりました。

続けられた理由と支え

10年間、在宅医療を続けられた原動力は、患者さんやご家族の「ありがとう」の一言。そして「人の人生に寄り添いたい」という想いを共にする仲間たちの存在です。

「この仕事が天職だ」と話す看護師やスタッフの姿に、自らの歩みが間違っていなかったと確信し、日々の診療に力をもらってきました。

地域の皆さんへ、感謝と未来へのメッセージ

「病気になったから病院へ」ではなく、「家で暮らし続けるために在宅医療を選ぶ」__そんな選択肢があることを、もっと多くの方に知ってほしい。

地域の皆さんに支えられて10年。これからも、人生の最期まで“その人らしく”過ごせるよう、「人生の伴奏者」として、皆さんのそばに寄り添い続けていきます。

これからの目標と挑戦

これからは在宅医療の「質」を地域のスタンダードにしていくことが目標です。訪問の頻度、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の取り組み、そして「笑いのある看取り」__こうした多面的な質の向上を目指します。

また、次世代を担う医師や看護師の育成も重要な柱。人としても成長できる「在宅医療の魅力」を若い世代に伝え、地域医療全体の力を高めていきたいと語ります。

地域とともに、これからも

「医療3割、生活7割」
そんな視点を大切にしながら、地域のお祭りや日々の会話にも関わり、顔の見える関係性を育みたい。
医療の枠を超えて、「先生がいるから安心」と感じていただける存在であり続けること__それが、静岡ホームクリニックをはじめとする医療法人社団 貞栄会のこれからの歩みです。
これまで支えてくださったすべての方々に、心より感謝申し上げます。
私たち横浜在宅診療クリニックも、地域の皆さまと共に歩んでまいります。